どうにかして生き残る日

徒然なるままに

「皆さん、今日はどうにかして生き残る日です。今日1日を何とかしてどうにか皆さんは生き残って下さい!」

サンタクロースの様な長い髭を蓄えた白髭の老人が大きな川沿いに集った僕達に突然とそんな事を語り出した。

「はぁ~??意味が全然分かんない。」

あまりに唐突に始まったその説明に全く理解ができてない僕がいた。

ふと周りを見ても川岸に無数に集められた人達もなんの話しなのか全く理解できてない様子だった。

その老人はそれだけ言い残すのいつの間にか川岸からはいなくなっていた。

「とりあえずこんな綺麗な川に来たんだしとりあえず遊ぼうか。」

そう言って隣にいた友人2人と僕は川へと入って行った。

気づけば周りにいた数百人の人達もそれぞれ川へと入り泳いだり潜ったりと遊び始めた。

少し泳ぎの苦手な僕は川沿いで貸し出しされていたレンタル浮き輪借り、川へと入った。

浮き輪の真ん中にお尻だけを入れ真っ青に晴れた空を眺めながらプカプカと時を過ごす。

雲一つない快晴で本当に気持ちの良い日だった。

どれくらいの時間が流れたのだろうか。

突然川上から”ゴゴゴゴゴー”っと大きな音が響いて来た。

周りの人達もその音に気づき少し騒めき出した。

なんの音なのか分からないまま浮き輪に乗り川上を眺めていると、少しずつ川上の水が僕達のいる下流に向かって黒く染まってきているのが見えた。

「何だろうあれ?」

隣にいたヒトシが呟いた。

「ゴミとか汚れ??」

後ろにいたセイヤが不思議そうに言う。

その瞬間、突然僕達3人はその黒い流れに巻き込まれた。

穏やかだったあの青い川が一瞬で真っ黒に染まり流れも突如として勢いを増す。

水泳部で全国大会上位決勝まで経験したヒトシでさえその流れに敵わず流されていくだけだった。

浮き輪に乗っていた僕もその流れの早さから浮き輪から落ち流されてしまった。

同時に全身に突然激痛が走る。

川から出している顔以外がとてつもない痛さに襲われる。

「何だこれ!?」

黒く染まる水を見るとその黒い正体が見えた。

「釘だ!」

家を建てる際に使用する五寸釘の様な太いものから押しピンの様な細いものまで大小様々な釘がこの川の水を黒く変えている正体だった。

勢いよく来たその黒い流れに飲まれてから釘だと理解するまでに5秒程の僅かな時間だった。

周りを見ると同じく川で遊んでいた数百人の人達も

「痛い!痛い!!」

と叫びながらどんどんと流されていく。

「ヤバい!このままだとマジでヤバい!」

瞬く間にして “死”の文字が脳裏を一瞬にして駆け巡った。

その時ヒトシが叫んだ。

「とりあえず体に刺さった釘を抜け!釘の重さで沈むぞ!」

その叫び声が終わると同時にセイヤも叫ぶ。

「川の流れに対して縦に浮かべ!釘の刺さる面積を最小限にするんだ!」

僕は2人のそのアドバイスを聞き、身体中に刺さる釘を抜きながら流れに対して必死に方向を変えた。

「とりあえず致命傷にならない様に腕でできるだけ釘を防いだ方が良い!心臓や頭に刺さったらマジで一発だ!」

一瞬にして10数メートル引き離されていく2人に対して僕も叫ぶ!

僕達3人の距離がどんどん離れていきながらもその間も僕とヒトシの間を無数の人達が流されていく。

「痛い!痛い!」

と叫ぶ人もいればすでに致命傷をおってしまったのか表情一つ変わらない人達も沢山流されていった。

突然と巻き込まれたその水と流れる死体の光景にパニックになりながら思い出した。

「…!?これがもしかしてさっきの老人が言っていたどうにかして生き残る日ってことなのか??」

と、さっきの言葉を思い出したその瞬間突然目の前に現れた滝へと吸い込まれていく。

「滝!?これ本気でヤバい!!」

そんなことを思っても勢いを増す流れにどうすることもできず、巻き込まれて落ちていく。

その間にも無数の釘は身体中に刺さってくる。

「ヤバいヤバいヤバいヤバい…どうにかして生き残れ生き残れ…」

その言葉で頭が埋め尽くされていく。。

バッ!!

体全体が一瞬沈んだ感覚に包まれたと思った瞬間…。

僕はいつもの部屋のベッドで目が覚めた。

はぁはぁ…

鼓動が高鳴り息が荒く何が起こったのか理解するまでには時間がかかった。

パソコンディスクに置かれた時計を見ると3/11の日付が表示されていた。

「そうか…今日って3月11日なんだ。。」

その日、本当に僕がみた夢の話し…